Vol.9 NAIJEL GRAPH(アーティスト)

Vol.9 NAIJEL GRAPH(アーティスト)

MY STANLEY vol.9 NAIJEL GRAPH

ナイジェルグラフとスタンレーの特別なプロダクト。

「H2.0 真空スリムクエンチャー 0.88L」。本国アメリカで大人気となっている同モデルと、今回コラボレーションを果たしたのがアーティストとして活躍するナイジェルグラフ(以下、ナイジェル)さん。普段から〈スタンレー〉を愛用している彼は、その大きなボトルに何を描いたのか。アーティストとしての船出や、日々の〈スタンレー〉との付き合い方を通して、本コラボレーションの制作秘話に迫ります。

ナイジェルグラフの今昔。

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話を聞きに訪れたのは、東京の東側にあるオフィス街。その少しはずれの雑居ビルの2階に、ナイジェルさんのアトリエがある。25畳ほどの室内には、これまで手がけてきた数々の作品や、ナイジェルさんがこよなく愛するアメリカントイ、レコードや本などがところ狭しと並ぶ。

「歩いている人は、本当サラリーマンの人ばかりですよ」

ナイジェルさんが手がけている作品を知っている人なら、渋谷や原宿あたりに根城を張っていると思うかもしれないけれど、土日になればまったく人がいない、そんな街にナイジェルさんはいる。

「地元が練馬なんですけど、妻が浅草の人だったので、そっちに住んでいる期間も長くて。いまは東のほうが好きですね。疲れちゃうじゃない、都会って」

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ここのアトリエに越してきてから5年目。普段は朝8時半頃にアトリエにやってきて、21時までこの場所にいる。作品を描く日も、そうではない日も、ほとんどの時間をこのアトリエで過ごすという。

「大きいものを描くときはだいたい床で描いていて、小さいものはテーブルで。あとはもう、ソファに座りながらアイデアが降りてくるのを待ってる感じですね。かといってここにいても、なかなか簡単には降りてこないんですけどね(笑)。でも、その待ってる時間がやっぱり大事で」

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知らない人のために、ナイジェルさんがナイジェルさんになった話を少しだけ。ときは遡ること高校時代。当時から落書きや工作が好きだったナイジェル青年は、好きが講じて、芸大を目指すことに。

「芸大目指して勉強をしたんですけど、倍率がやばくて、2000人くらい受けて50人しか受からないような世界で。で、結局三浪したんです(笑)。その三浪目に、親から『どこも受からなかったら就職しなさい』って言われちゃって、それはイヤだったから、「桑沢デザイン研究所」を受験して、なんとかそこに入ることができたんです。ただ、そこも結局クビになっちゃったんですけどね」

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そこからは音楽活動に没頭した時代があり、単身メキシコへと赴きZINEの制作を経て、とあるデザイン事務所の門を叩く。

「その頃、雑誌『POPEYE』のデザインをやっていたデザイン事務所に応募したんです。日給1万円だったかな、めっちゃ良かったんですよ。で、履歴書には専門学校卒業って書いて面接行ったら、専門の同級生がいて「おー、元気?」なんつって、もう退学になったのがすぐバレて(笑)。でも、なんか入社させてくれて」

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その時代に、いまでも親交のあるスタイリスト長谷川昭雄さんと出会うことに。初対面は、長谷川さんが手がけたファッションページに落書きしているところだった。

「ハセさん(長谷川昭雄さん)のスタイリングを勝手に切り抜いたりして、その上に落書きとかしてたら、たまたまハセさんと出くわして『俺の作品に何やってんだ!』って怒られて。そのあとに『お前おもしろいな、遊びに行こうぜ』みたいな感じでしたね(笑)。そのデザイン事務所を独立してからの食えない時代も、ハセさんがしょっちゅうメシに連れてってくれて、最初に仕事をくれたのもハセさんでした」

本作はロゴをブートで。

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独立後の活躍は、多くの人が知るところ。インディペンデントなショップから世界的なビッグブランドまで、大小問わず多くのコラボレーションを果たし、さらにはBEASTIE BOYSのオフィシャルグッズまでを手がけるほどに。そして今回、ナイジェルさんが「H2.0 真空スリムクエンチャー 0.88L」に特別なイラストを施したプロダクトがリリースされる。

この「H2.0 真空スリムクエンチャー 0.88L」。本国のアメリカではとにかく人気が高く、買いたくても買えない状態で、ウェイティングリストも数千人。このモデルを持っていることが、ある種のステータスになりつつある。しかもアメリカだけではなく、韓国や中国、オーストラリアなどでも同じ状態だというから驚き。

「だから、ぼくもSNSでこのモデルとコラボレーションしたよって投稿したら、アメリカに住む友達からすぐ『どうにかなんない? 送ってくれない?』って、すぐメッセージが届きましたもん(笑)」

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ナイジェルさんが描いたのは、得意のブートスタイル。〈スタンレー〉の質実剛健さはそのままに、表と裏に、オリジナルでも描かれているロゴをあしらった。

「特にオーダーとかはなかったんです。ただ、よくあるような、花とか描いちゃったりするのもなんか違うし。だからいつも通り、ロゴをブートっぽくしたら可愛いなって。ちなみに、箱も頑張りましたよ、捨てられるものだけど(笑)。こっちも完コピで、その辺のバカっぽさがいいなと思ってます」

ナイジェルさんのタッチで描かれたボックスは、捨てるにはもったいない。購入していただいた方は、ぜひ、部屋のオブジェとしてご使用を。

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デザインもさることながら、当モデルの人気の秘密は、なんといってもそのサイズ。1リットル近くある大容量は、一度飲み物を入れたなら1日中補充しなくても事足りる。しかも、温かいものは温かいまま、冷たいものはキンキンの状態でキープしてくれる。また、ストローで飲むこともできるし、上部のアジャスターをくるっと回せば別の飲み口が現れて、直に飲むこともできる。

「あとね、ちょっとでかすぎるって思うじゃない? ただ、実際使ってみると本当にサイズもちょうどいいんです。遠慮せず、ゴクゴク飲める。それと自分はクルマ移動が多いんですけど、このモデルは下のほうが凹んでいて、ボトルホルダーにもしっかり納まってくれるんです。考えられてますよね」

あの海外アーティストも使っている、かも。

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ナイジェルさんが、はじめて〈スタンレー〉を購入したのは、専門学校に通っていた時代。古着屋でみつけた、ハンマートーングリーンの〈スタンレー〉だった。

「たしか、ザ・水筒みたいなやつでしたね。やっぱりアメリカンなビジュアルがかっこよかったんですよね。それに米軍で採用されている=国が認めているっていうことじゃないですか。その保温力と保冷力、頑丈さは、日本のメーカーと比較しても、やっぱり優れているなって感じました」

いまは、はじめて買った〈スタンレー〉以外にも、上述した「H2.0 真空スリムクエンチャー 0.88L」をはじめ、大小さまざまな種類の〈スタンレー〉を持っているナイジェルさん。コーヒー用、お茶用、お出かけ用などなど、モデルによって使い分けているという。

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「ただ、まだアトリエで使ったことがないんですよね(笑)。いまはコンビニでアイスコーヒーを1日2〜3杯買ってるんですけど、今度からは『H2.0 真空スリムクエンチャー 0.88L』を持ってくれば、コーヒーを買いに行く時間もはぶけるし、そうしようかなと思います」

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インタビューも終わりかけに、アトリエのインターホンが鳴る。玄関から戻ってきたナイジェルさんが抱えてたのは、大きな段ボールだった。

「BEASTIE BOYSが所属してるSilva Artist Managementっていうマネジメント会社があって。BECKやFOO FIGHTERSとかもいる会社なんですけど、その社長と友達で。で、この間、FOO FIGHTERSがフジロックに出るっていうので社長も来日していて会ったんですよ。そこで今回の〈スタンレー〉をプレゼントしたら、最高じゃねーか! みたいな話になって『メンバーにもあげたいから、もっとくれよ』って。で、メンバー分もプレゼントしたら自分の分がなくなって、追加で届いたのがこの段ボールです(笑)」

そのうち、BEASTIE BOYSやFOO FIGHTERSのSNSで今回の〈スタンレー〉が見られるかも。


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NAIJEL GRAPH
ナイジェルグラフ/アーティスト。イラストやコラージュ、立体などの作品を制作する。Beastie Boys のオフィシャルグッズや写真集『beastie boys book』のTシャツなどを手掛ける。また adidas originals とはコラボで STAN SMITH をリリース。アメリカやロンドン、香港など海外での個展の活動も盛んに行なっている。国内では Gallery Target にて映画『E.T.』の40周年を記念したオフィシャル展覧会「E.T. The Extra-Terrestrial by NAIJEL GRAPH」を開催。 絵本『なんでもたしざん』では、日本書籍出版協会理事長賞を受賞。
Instagram:@naijelgraph

Photo:Go Tanabe
Text:Keisuke Kimura
Edit:Jun Nakada