奮発してプレゼントした、思い出のスタンレー。
幼少期から自然とともに暮らし、アウトドア歴は四半世紀。そのなかで得た知識を生かし、現在はアウトドアブランドのPRや、ビジュアルのディレクションなどを手がける山田昭一さん。いまも、多くの時間をアウトドアで過ごすという。
「月の半分くらいは、アウトドアで撮影をしています。終日撮影をして、家に帰ってきてから事務仕事というルーティーンですね。昔は妻と一緒にキャンプなんかもよくしていたんですけど、最近は全然行けてなくて」
そんな山田さんが、「最も思い入れがある」と紹介してくれたスタンレーは、1リットルの真空ボトル。
「買ったのは7年前くらい。当時、全然お金がなかったんですけど、奮発して奥さんにプレゼントしたんです。それからは、このボトルを持ってふたりでよく外遊びに出かけました。シールも剥がれちゃってるし、所々に傷やら凹みがあるんですけど、そのひとつひとつがいい思い出なんです。もちろん、いまも屋外に持っていくことがあるし、撮影の小道具としても使わせてもらってます」
続けて「とにかくタフ。ちょっと重量はあるけど、それが信頼感に繋がっていたりもする」とスタンレーの印象を語る山田さん。
たしかに、この令和の時代、もっと軽量で使い勝手のいいものもあるかもしれない。けれど、創業100年を超える信頼度は、アウトドアのフィールドにおいてはなにものにも代え難い。
「仕事柄、いろんなボトルもいただくんですけど、どうしてもスタンレーを手にとってしまうんですよね。この重量も信頼の証と思えば、全然気にならない。ボディもそうなんですけど、細かなパーツも作りがしっかりしているから、落としたところでビクともしないんですよ。アウトドアで壊れたりすると最悪だから、その不安のないスタンレーは本当に優秀だと思います」
過酷な環境を共にし、ときにはラフに扱いながら、丁寧にアフターケアを施す。そうして山田さんのスタンレーは、味わい深い、オリジナルのボトルへと成長を遂げている。第一子が8月に生まれ、今後はまた、違う使い道も考えているという。
「最近は妻とデートに行くことも少なくなってきて、以前より出番は減ってきているんですけど、生まれたばかりの息子が外出できるようになったら、これにミルク用のお湯をいれて出かけようかなって思っています」
キャンプサイトにも映えるデザイン。
キャンプのシーンで、水は必要不可欠。飲み水としてもそうだし、汚れてしまったカトラリーをサッと洗ったりするのにも、水はなくてはならい。そんなときに活躍してくれるのがスタンレーのジャグだ。
「以前使っていたジャグはステンレス製の薄いものだったんです。それだと、夏場に冷たい水を入れておいても、すぐぬるくなる。でもスタンレーのジャグに代えてからは、保冷機能が本当に高いから、ずっと冷たいままで驚きました。キャンプのときのジャグって本当に便利で、飲料水としてもそうだし、手を洗うのにも、野菜をサッと洗うのにも使える。なくてもいいんだけど、あるとキャンプの快適度が格段に上がるんですよね。これは3.8リットルで、大きすぎず小さすぎずのサイズ感が良くて気に入っています。もうひとつ上のサイズで7.5リットルのものもあるんですけど、それだとぼくのギアボックスに入らないから、こっちのサイズを使っています」
もうひとつ、最近購入したのが「スタッキング真空パイント 0.47L 4本セット」。家でもアウトドアでも、場所を選ばず大活躍しているという。この日も、お手製の梅ジュースを真空パイントにいれて、取材陣に振舞ってくれた。
「実はこの類のカップってこれまで持ってなかったんです。でも、予想以上に口当たりが良くて、とくに外でビールを注いで飲むと、プラスチックのカップよりも格段に美味しく感じますよ。保冷と保温の効果も高い上に、冷たい飲み物を入れても器に水滴がつくこともないから、家でも重宝しています。例に漏れず、撮影の小道具としても使わせてもらっています(笑)」
山田さんが生み出すテントサイトは、いつもラギッドな雰囲気で統一され、ひとつひとつのギアもこだわり抜かれている。そんな世界観でも「スタンレーはインテリアを邪魔しない。どんなギアともマッチしてくれる」と山田さんは言う。
息子の世代まで継承していきたい。
最近買い換えたという82年式の「ボルボ 240」で山田さんは撮影現場へと向かう。誕生から40年経ったいまも、たまにエンストはするものの、しっかりと目的地まで走ってくれる。
「このクルマで、片道2時間くらいかけてロケ場所へ向かうときもあるんです。スタンレーも新品より少しやれた感じがかっこいいように、このクラシックさがたまらなく好きなんですよ」
2時間のドライブのお供に持っていくのが、最も使用頻度が高いという「真空ワンハンドマグ(0.47L)」。
「妻にプレゼントした1リットルのボトルの小さい版が欲しいと思って、あるとき購入させていただきました。これはもう、めちゃくちゃ使ってますね。テープもはがれちゃったり凹んだり、いい感じになってるでしょ?(笑) 朝、これにコーヒーを淹れて、クルマにセットして、撮影現場に向かいます。プッシュ式で片手で飲めるから、運転中も飲みやすくて。バッグに突っ込んでも漏れないし、外出するときは高確率で持っていきますね」
山田さんが携わるアウトドア業界は、いま、空前絶後の大ブームを迎えている。ただ、各社の業績は上がる一方で、ネガティブな側面もある。それがギアの廃棄問題だ。
「コロナ禍でキャンプの盛り上がりがすさまじくなりましたけど、そのブームの裏で、リサイクルショップではキャンプギアがリセールされまくってるんです。どこのメーカーかもわからないようなものだから、結局いずれは廃棄されていく。別にぼくは、サスティナブルに対する意識が高くないんですけど、さすがに看過できなかった」
その窮状を、少しでもポジティブに変換するために山田さんがはじめたのが、不要となったギアを再利用して、新たなものへとアップサイクルする取り組み。
「いま、使い捨てられたアウトドアチェアの座面であったり、ザックカバーだったりを集めて、それをエコバッグやカバンにリプロダクトして商品化しようとしているんです。まだ試作段階ですけど、結構かっこいいものができそうなんですよね」
そう話したあと、思い出したかのように言葉を続けた。
「そういえば、スタンレーってリセールされているのを見たことがない。やっぱり、ずっと使える屈強さや、タイムレスなデザインがそうさせてるんでしょうね。息子が大きくなっても使えるだろうから、そうして次の世代までも受け継いでいけたら、最高だなって思います」
山田昭一
やまだ・しょういち/1978年生まれ、埼玉県出身。セレクトショップやアウトドアブランドのPRを経て独立。現在はブランドのPRのほか、スタイリストやファッションビジュアルのディレクションなど、その仕事は多岐に及ぶ。
Instagram:@yamadaze(https://www.instagram.com/yamadaze/)
Photo:Kazuma Yamano
Text:Keisuke Kimura
Edit:Jun Nakada