Vol.7 鳥羽周作(シェフ)

Vol.7 鳥羽周作(シェフ)

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

すべてのものに気を配る。

「4年連続で取れちゃったんですよ、一つ星」。

そう、こともなげに語るのは、代々木上原にあるミシュランガイド東京2020から4年連続一つ星掲載店「sio」のオーナーシェフ・鳥羽周作さん。知っての通り、一つ星を獲得するのは並大抵のことじゃない。数多ある飲食店のなかで、ごくごく限られたレストランにしか与えられない称号だ。

TVやYouTubeを通して、鳥羽さんを知っているという人は多い。あの特徴的な声と小気味いいボケの数々に加え、披露するレシピは誰もが家にある材料で再現できるのに、味は絶品。きっと、あんなに身近に感じることができる一つ星シェフは、鳥羽さんくらいなものかもしれない。

もちろん料理に対しては真摯で実直。仕事はどこまでも細かい。画面に映るキッチンはいつも掃除が行き届き、料理道具は整然と並んでいる。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

「キッチンが汚れていたり仕事が汚いと、味にも反映されると思うんですよ。なので、俺のYouTubeを見てもらったらわかるんですけど、いつもキレイだし、包丁だったり布巾もいつも同じ場所にあるんです。しかも、俺、絶対汚れてないもんね!」
汚れていないのは、なにもキッチンに限ったことではない。鳥羽さんと言えば、白Tと白のエプロン。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

「例えばですよ。〈マルジェラ〉のエプロンをして仕事をしていたら、絶対汚すまいと思うじゃないですか。俺の中でのユニフォームの価値観は、そういう感じ。汚さないことを前提にして自分を律するほうが仕事もキレイになる。だから俺は白を着るんです」

鳥羽さんのこだわりは、至るところに詰まっている。顕著なのが、使う道具たち。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

「sio」でお客が使うテーブルナイフは驚くほどの切れ味。その実力はぜひ「sio」で確認を。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

お客様に出されるコップ。ちょっと肉厚な縁が「水の味をまろやかにしてくれる」という。

「料理道具は、ちゃんと性能が優れていることと、次に大事なのはデザインです。ミニマルなデザインのものが好きで、鍋やフライパンもそうだし、提供する食器類もそう。お客さんが使うナイフなんかもめっちゃ凝ってて、2回使ったら、プロの方に研いでもらってるんです。だからめちゃくちゃ切れますよ。テーブルクロスもなにもないんだけど、ナイフが日本一切れるって、かっこよくないですか?」

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

他にも、おしぼりも日本で一番いいものを使い、水を提供するグラスも厚さや飲み口に徹底的にこだわっている。そうした目利きの基準があるなかで、どのメーカーのタンブラーを使うかとなったとき、鳥羽さんが選んだのは「スタンレー」だった。

4つのスタンレーを家と仕事場で使い回す。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

鳥羽さんが愛用している「スタンレー」は4つある。YouTubeでも度々登場しているピッチャータイプと、家でコーヒーを飲む用のマグ、携帯に便利なボトル、そしてジョッキタイプだ。

「とにかく、普段からめっちゃ水を飲むんです。本来であればピッチャーからグラスに入れて飲みますけど、夏場は面倒なので直接ピッチャーで飲んじゃってます(笑)。中くらいの白いタンブラー(写真の右から2番目)に関しては、うちのスタッフもよく使っていて、使い勝手がめっちゃいいっす。まかない食べるときなんかも、みんなマジでこの『スタンレー』ですから」

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

家で使うのは、写真右に映る小さなタンブラー(ブラック)。「コーヒーだったりお茶って、あまり大量に飲めないじゃないですか。だからこのくらいのサイズがちょうどいいんです」と言う。続けて「飲み口がすごく滑らかで、本当に飲みやすいんですよね。あと、やっぱり熱を保つので、温かいものも冷たいものも、ずっとその温度なのはありがたい」。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

ジョッキタイプは、家でハイボールを飲むときに活用中。てっきり、高級なグラスで飲んでるかと思いきや、「スタンレー」を多用しているという。「家でグラスはあんまり使ってないですね。『スタンレー』のほうが頑丈で、氷も溶けないのでいいんですよ。たまにタンブラーにラップをして、そのまま冷蔵庫に入れておくこともあります」と、ならではの使い方も教えてくれた。

最近はクルマを入れ替え、YouTube内でも「ワンパンパスタ」と題してフライパンひとつで絶品料理を作っている。実は、それもこれも、すべては来年のためだという。
「いまは全然ですけど、わたくし、今年から、キャンパーになります!(笑)。そのためにいま手間のかからないレシピを開発しているし、クルマもそのためです。もちろんそこにも『スタンレー』は持っていきますよ、必ず!」

カルチャーの文脈にあるスタンレー。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

渋谷のトレンド発信地「stacks bookstore」のオーナーが手がけた写真と額装。

鳥羽さんを語る上でカルチャーは欠かせない。店を見渡せば、注目を集める編集者がキュレーションした写真が飾られ、カリスマ的人気を誇るスタイリストが手がけた大きなファッション写真も鎮座する。店内の音楽を手がけているのは、誰もが知るDJが、鳥羽さんのためにリミックスしたものだ。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

鳥羽さんが左手に持つのは、MUROさんが手がけた「sio」4周年の記念CD(非売品)。右手に持つのは「sio」で使われているパスタ。

身につけるものも、鳥羽さんが好きなブランドのもので固められている。なにも高級なものではなくて、鳥羽さんが心の底から愛するブランドたち。鳥羽さん然り、「sio」の店づくり然り、どこを切り取ってもカルチャーが滲み出ている。改めてだけど、ここはギャラリーでもショップでも、なんでもない。歴としたミシュラン一つ星を獲得したレストラン。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

「(代々木)上原にはクリエイターが多いんです。だから音楽であったり、飾っているもの、使っている家具に至るまで、そういう人たちのツボを刺激するものばかりです。ここまでカルチャー好きに刺さるミシュランの店って、ここだけでしょうね(笑)。おしゃれな店はたくさんあるけど、そういう店とは文脈が違うんです」

鳥羽さんの料理や店づくりは「本質」の二文字を大事にしている。だから表層的なファッションだけではなく、その前後に広がるカルチャーが肝なのだ。使うものすべてが、それに準ずる。

「だから『スタンレー』を使っているんです。無骨で飾り気はないんだけど、オーセンティックでいて、たしかな機能がある。質実剛健で、まさに本質を突いてる」と鳥羽さんは言う。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

この日は〈ニューバランス〉の1906を着用。家にはおよそ200足の〈ニューバランス〉が眠っているという。

そして鳥羽さんは、何よりも「ニューバランス」をこよなく愛している。毎月5足ずつ買い足すほど。料理道具も「ニューバランス」の靴に例えることがある。

「それで言ったら『スタンレー』は1300みたいな感じが。アイコンのカラーがあって、オーセンティックではあるんだけど、攻めるときは攻めるみたいな(笑)」

スタンレーは本質そのもの。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

「これがうちのスペシャリテ」と言って出された皿には、それはそれは繊細で、色鮮やかな料理が盛られていた。正体は馬肉とビーツのタルタルだ。端に寄せられた盛り付けも「お客さんが取りやすいように」と配慮されている。華美な飾り付けはないけれど、この小さな一品に驚くような手間暇がかけられ、使っている材料にも一切の妥協がない。

こうした鳥羽さんの料理に舌鼓を打つためには、これまでは「sio」に行くしかなかったが、1年前に「sio」の姉妹店にあたる「Hotel's」を表参道にオープン。そこでは、もっとカジュアルに、鳥羽さんのフランス料理を堪能できる。

MY STANLEY vol.7 鳥羽周作

「『Hotel's』は、やっぱ時代の先に行っちゃってるんです。予約が取れないレストランなんて目指してないんですよ。2年後の予約を取って喜ぶとか、そういう次元の話じゃない。「今日行ける?」って電話一本で行けるくらいのノリが、やっぱぼくらにはちょうどいいんです。それと、あえてレストランの重たい空気感をなくしているし、Tシャツ短パンなんだけど超うまいメシが食える、みたいな感じ。一方で椅子は良いのもの使ってますし、音楽にもこだわってます」

誰も、緊張してご飯なんて食べたくない。最高の道具と音楽、そして極上の料理を、気取らず食べる。鳥羽さん流の本質とは、そういうこと。

「〈スタンレー〉もそうじゃないですか。いいものを使っていながらも、しっかりとした機能があって気取ってない」と鳥羽さん。続けて「『ニューバランス』を履いて『スタンレー』を持って街を歩くとか、最高にかっこいいじゃないですか」と笑ってみせた。


鳥羽周作
とば・しゅうさく/1978年生まれ、埼玉県出身。Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31歳で料理人の世界へ。名だたるレストランで修行を重ねたのち、2018年「sio」をオープン。現在は業態の異なる8つの飲食店を運営中。
Instagram:@shusaku__toba

Photo:Hiroyuki Takenouchi
Text:Keisuke Kimura
Edit:Jun Nakada